企業の「ミドル・シニア向けキャリアデザイン・ライフデザイン研修」を中心
に提供しております。40代半ばから50代のビジネスパーソンに対する、今後の
キャリア構築とライフやマネープランを総合的に考えていただく研修です。
キャリアを中心としながら、ライフやマネー(パーソナルファイナンス)
を同時に考えることで今後のキャリアデザインが拡がります。さらに、ビジネ
スパーソンや一般個人向けのキャリア相談・パーソナルファイナンス相談
にも注力しています。 ※オンライン型研修・オンライン型個人相談 対応中

《改正高年齢者雇用安定法の動向》

8月に成立した改正高年齢者雇用安定法により、2013年4月以降、企業は60歳定年後の希望者全員を65歳まで再雇用することになります。

高年齢者雇用安定法は、2004年の改正で高齢者の安定した雇用を確保するために定年を定める企業に対して以下のいずれかの措置を求めてきました。具体的には、企業に、①定年の引き上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年の定めの廃止 のいずれかを義務付けるものでしたが、同時に経過緩和措置もとられてきました。それは2013年4月に65歳定年または65歳までの継続雇用制度導入を目指し、順次、その年齢を引き上げるというものでした。ほとんどの企業は継続雇用制度の導入で対応してきました。

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今回の改正においては、継続雇用を希望する対象者の雇用義務期間が、厚生年金の受給開始年齢の引き上げに合わせて、順次拡大することになります。厚生年金受給年齢に達していない継続雇用希望者については希望者全員の再雇用が義務付けられ、厚生年金受給年齢を超えている継続雇用希望者については従来の労使協定による基準を適用できます。従って、2025年度には希望者全員の65歳までの再雇用が実現することになります。

また、今回の改正ではいくつかの変更点もあります。現在は継続雇用する対象者はその基準を労使協定で定めることができますが、2013年4月以降は原則として雇用希望者全員を継続雇用することになります。(※心身健康状態の基準該当者は除外)また、この法律に違反した場合、現在は勧告ですが、2013年4月以降は企業名の公表となります。これらの変更点はコスト面・コンプライアンス面で企業への大きな負担増となることが考えられます。

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《労働人口の変化予測と企業の課題》

今後、企業にとってシニア層(50歳代以上のビジネスパーソン)の戦力化は最優先経営課題の一つになると言えます。多くの企業で、5年後10年後15年後とシニア層の比率は高まり、定年再雇用の人員は格段に増えていくことになるからです。

現状の定年再雇用の社員はどのような仕事をしているのでしょうか。多くの企業で、定年再雇用の社員は契約嘱託社員となり、仕事の範囲は限定的となり責任権限も減少します。今まで多様な経験をし、知見・ノウハウを蓄えてきた人材を60歳定年という“ひとつの時間”を過ぎただけで、包括的に管理を行うというのは、人材活用の視点から考えても有効な施策とはいえません。今後、シニア層の比率が高まるため、従来の定年再雇用後の仕事の役割設定には限界があり、かつ、コスト効率からしても大変非効率となります。早急にシニア人材の役割を再設計し、シニア人材による成果創出の仕組みを実現する必要があるのではないでしょうか。今後の企業組織の人員構成の変化を考えると、企業がシニア人材の活躍の場を真剣にかつ積極的に創ることが企業活力につながることを強く認識すべきだと思います。

《今後の取り組み課題と押さえるべきポイント》

 シニア層(50歳代以上のビジネスパーソン)の戦力化を進める企業は、まだ多くはありません。将来の課題を抱える各企業が模索をしている状況と言えます。しかし、早急に手を打っていく必要があることは既に述べてきました。現状では大企業においては量的な対応に終始しがちですが、今この時にこそ、数十〜数百人規模の企業が人材管理で先手を打ち質的な課題に対応すべき時だと思います。まさに待ったなしの状況ではないでしょうか。

私は、以下の3つのポイントを実践することから始めることをお勧めします。それは、①シニア人材の新たな役割を再設計する ②新しい役割を実践する活躍の場(組織・チーム)を創る ③同時にシニア人材の意識を転換させる の3つです。

一つ目の新たな役割の再設計では、エキスパートプレイヤー役割、マネジメントや専門分野のアドバイザー役割、企業内外間・組織間・チーム間の橋渡し役割、固有の知見・ノウハウ・技能の伝承役割、若手人材育成役割などのシニア人材活躍の基本となる役割とそれぞれの人材固有の役割を融合し、個々の人材に根ざしたユニークな役割を設計する必要があると考えます。

 二つ目の活躍の場づくりでは、組織やチームといった働く場はもちろん、雇用パターンの多様化、報酬体系の整備などが含まれます。どこの企業でも最も対応が遅れているのが報酬体系の整備です。定年再雇用後の一律賃金管理では今後は意味をなさないことを認識し、早急に新しい役割に連動した報酬体系によるシニア人材の成果創出を目指す必要があります。

 三つ目のシニア人材の意識転換は、雇用制度・報酬制度説明会や意識変革研修などによって明確に企業のメッセージを伝えることが重要です。定年がゴールと思っているシニア人材に、まだまだ自らが主体的・積極的に仕事に取り組むことで働き甲斐を実感しながら結果として組織にも貢献する働き方を実践してもらう必要があります。

3つのポイント

総合商社A社

自動車関連メーカーB社

新たな役割の再設計

・シニア人材活躍の基本役割と人材固有の役割の融合

・シニア人材バックアップのための専任組織体制

・シニア人材活用と若手人材育成を目的にチームを再編

活躍の場づくり

・組織、チーム

・雇用パターン

・報酬体系の整備

・内部活躍の場づくり

・外部からの求人情報とその提供

・人事制度の再設計

・シニア人材活用ラインの模索

意識転換

・働きがいの実感

・組織に貢献する働き方の実践

・研修体制の充実

・研修の実施

《シニア層戦力化へ取組む企業の事例紹介》

 シニア層活用に積極的に取り組む企業の事例を簡単にご紹介したいと思います。

【総合商社A社】

 ・シニア人材バックアップのための専任組織体制を敷いている

・キャリア研修・パーソナルファイナンス研修・知識スキル研修など研修体系を充実させている

・内部活躍の場づくりと相談スタッフを充実させている

・外部からの求人情報収集とその提供も行っている

 ・シニア層活用に向けての人事制度再設計を進め2012年より説明会を実施中。

【自動車関連メーカーB社】

 ・キャリアライフ研修・パーソナルファイナンス研修の実施

 ・製造部門によるシニア人材活用ラインの模索

 ・シニア人材活用と若手人材育成を目的にチームを再編

  (シニア人材にはプレイヤー役割へのシフトと若手へのノウハウ伝承、若手人材にはシニア人材の経験による仕事上の人脈・知見・視点の理解を目指す試み)

 

2012年9月 LDS田島俊之

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